散骨の法律・許可・条例を知っておこう!

散骨に関する法律の本 散骨

散骨に関する法律、条例など散骨初心者もやさしく解説していきます。

散骨を検討中の人にも

  • 家族・友人に説明できる
  • 自分で散骨するのに役立つ
  • 正しい散骨ができる

とメリットがあるので、どうかお役立てください。

散骨は合法です

法律には散骨してもOKとは書いていませんが、禁止とも書いていません。つまり明文化はされていませんが法律の解釈上、合法となります

「本当に散骨して大丈夫なの?」「違法だよ」という人もいますが、散骨をしている人1991年の法務省刑事局の見解でも、非公式ながら「葬送のための祭祀さいしとして節度をもって行えば違法ではない」と発表をして事実上認めています。

また、私たち国民には「宗教の自由」「葬送の自由」という権利があり、憲法13条でも「個人の意思」を尊重する観点からも、散骨は認められているわけなのです。

散骨に手続き・書類は必要か?

前述のとおり、散骨について書いた法律がないために今現在、許可や届出の記載もなく、書類提出もありません。

ただ、書類を必要とする場合は以下の通りです。

散骨業者に依頼する時は、

・火葬・埋葬許可書
・身分証明書

が必要になります。

また、お墓に預けた遺骨を散骨する時も役所の届出は不要です。ですが「改葬許可証が無いとダメ!」と言う住職がまれにいます。

この改葬許可証とは、新しいお墓に移す場合に役所でもらう書類です。散骨は「新しい墓に引越し」では無いので、本来は改葬許可証の必要はありません。

散骨に関する法律

遺骨遺棄罪と墓地埋葬法をみてみましょう。

散骨禁止・制限をした条例があるのでそれは記事後半で解説します。

まずは、散骨をする前に遺骨を細かくして「粉骨」にすることが必須条件ですが、この遺骨遺棄罪をみてください。

刑法190条 遺骨遺棄いき
“死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、3年以下の懲役に処する”

・遺骨の粉砕は「損壊」になる?
・遺骨を撒くことは「遺棄」にあたる?

が焦点となります。

第三者への配慮や、宗教的感情を害さないためにも遺骨のまま姿では撒けないので、祭祀継承者や遺族が葬送目的として海や山に散骨するための粉骨化は損壊・遺棄にはならないようです。

つぎは墓地埋葬法です。

「埋葬行為」と「焼骨の埋蔵」が対象です。

墓地、埋葬等に関する法律(墓地埋葬法)第四条1項
”埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない”

「社会通念上、埋葬と認められない態様で放置すること」に対する罰則の法律のため、遺族が遺灰を撒く散骨行為は埋葬・放置には該当しません。そして個人の散骨は刑事罰の対象にならないので過去に罰せられた事例もありません。

東京都福祉保健局では法的解釈や散骨方法など記載された「散骨に関する留意事項」のページが正式に用意されています。

海上保安庁に海洋散骨について問合せをしたら「海事法や条例を守れば良い」と回答をもらいました。(平成30年4月確認済)

 

海洋散骨ガイドラインについて
海洋散骨を正しく行うために一般社団法人 日本海洋散骨協会ではガイドラインを設けており、マナー・散骨の仕方がわかるルールブックも公開しています。あくまでも自主ルールですがスタンダードになりつつあります。

自分で樹木葬したい!その法律は?

自分で樹木葬したい場合、遺骨も粉砕した粉骨も穴を掘って埋めるのも、落ち葉や土を被せるのもダメなんです。

埋葬法違反になりますので、粉骨にした遺灰は地面に撒くだけにしてください。埋葬ができるのは自治体から許可をもらった墓地だけです。

自宅の庭なら大丈夫?という相談がありました。権利上問題のない土地で自宅を将来売らないという前提なら埋葬ではなく散骨はできます。

ペット散骨の法律について

ペットの遺骨は法律上「モノ」扱いです。なので埋葬法や死体損壊罪、遺骨遺棄罪の対象ではありません。

ペットの死それでも遺骨なので粉骨にしたほうが良いでしょう。そして人目を避けて庭や海、山にそっと遺骨だけを散骨供養してあげてください。そして庭でもペットなら散骨も埋葬も大丈夫です。

散骨の条例&規制

ここからは規制・制限された自治体の条例を見ていきます。
主に散骨業者が対象となりますが、個人の該当もあるのでチェックしてみてください。

北海道・長沼町
日本初の散骨を禁止にした条例です。平成17年「長沼町さわやか環境づくり条例」により町内の散骨を規制しました。自治体・住民への十分な説明がないまま散骨場(樹木葬)を開き分譲をしていたNPO法人への反対運動が背景があります。この条例の第11条では「何人も、墓地以外の場所で焼骨を散布してはならない。」としています。「散骨場を提供することを事業として行った場合の罰則は6月以下の懲役又は10万円以下の罰金となっています。

北海道・七飯町
平成18年「七飯町の葬法に関する要綱」により散骨を規制しました。この「要綱」は法的な拘束力はなく罰則もありません。
ただし「死体又は焼骨を土中に葬る、若しくは焼骨を収蔵する以外の葬法」を「法定外の葬法」として散骨事業を行おうとする場合には、事業者は町長の指導を遵守することと定めています。
また散骨事業者は説明会を実施して町内会会員の総意の承諾を得なければなりませんが、個人による散骨の規制は行われていません。

北海道・岩見沢市
平成19年「岩見沢市における散骨の適正化に関する条例」を定めています。この条例は散骨場事業者に対するもので、無許可で散骨場を経営することに対しては、6か月以下の懲役又は 100 万円以下の罰金の刑罰も用意されています。
また、条文を解釈すると個人の散骨も禁止となりますが罰則は設けられていません。

長野県・諏訪市
平成18年制定された「諏訪市墓地等の経営の許可等に関する条例」では事業者へ散骨場設置に市長の許可が必要としています。設置場所については、道路・鉄度・河川から50m以上、人家等から200m以上、そして高燥地と定めています。さらに「諏訪市墓地等の経営の許可等に関する条例施行規則」では周辺自治体からの同意書が必要としています。諏訪市内で事業者が散骨場の設置は困難と思えますが、個人の散骨は規制がありません。

埼玉県・秩父市
環境保全を目的とした「秩父市環境保全条例」により散骨行為を規制しています。平成20年の改正では「何人も、墓地以外の場所で焼骨を散布してはならない。」という条文の追加によりさらに散骨はさらに強く禁止されました。特徴的なのは環境保全から散骨をゴミ・フン害と同じ扱いにした「焼骨の散布制限、ごみ等の投棄禁止及び飼犬のふん害等の防止」で定めてている事です。
そして秩父市のホームページをみると「秩父市内で焼骨を散布しようとするすべての人 」が規制対象となり「原則禁止」ということだけが説明されています。
この条例・規則では散骨に関する罰則はありませが事業者が散骨場を開業することは難しいでしょう。個人の散骨も禁止の対象とされています。

埼玉県・本庄市
平成22年に施工された「本庄市散骨場の設置等の適正化に関する条例」では主に散骨場設置に関する規制を行っています。内容としては市長の許可や散骨場から300m以内の住人への説明会を義務化しています。
特に罰則は設けられていませんが、市長の使用禁止命令権限があります。
ただし規制の対象は散骨事業者であって個人が行う散骨には規定がありません。

神奈川県・湯河原町
平成26年7月31日施行「湯河原町散骨場の経営の許可等に関する条例」によって、散骨場の設置に対しての規制条例。近隣住民の同意を得るなどの要件あり。個人に関する散骨については定められていません。

静岡県・熱海市
平成27年熱海市は「熱海市散骨場の経営の許可等に関する条例」を施行、また「熱海市海洋散骨事業ガイドライン」も策定しました。
このガイドラインは海洋散骨事業者を対象として個人は対象外です。法的拘束力もなく罰則はありませんが、厳しい使用禁止命令権限を定めた内容となっています。
また、観光地である熱海ブランドの保護の観点から「熱海沖」、「初島沖」など、「熱海」を連想させるような文言を使った宣伝や広報をしないよう求めています。

静岡県・伊東市
平成27年「伊東市散骨場等の経営の許可等に関する条例」を制定、「伊東市における海洋散骨に係る指針」も翌年に策定。
散骨場設置については使用禁止命令等の権限をもつ市長の許可が必要です。また海洋散骨については事業者に対し、陸地から6海里(約11㎞)以内の海域では散骨禁止、ビニール、プラスチックなど自然に馴染まない人工物を一緒に撒かないこと、伊東市を連想させる宣伝・広報を行わないことなど禁止・制限しています。個人の散骨について規制は行われていません。

静岡県・御殿場市
平成21年施行の「御殿場市散骨場の経営の許可等に関する条例」、「御殿場市散骨場の経営の許可等に関する条例施行規則」において散骨事業は市長の許可が必要です。
散骨事業者が土地を所有し、隣地所有者の同意と共に散骨場から300m以内の自治会に対する説明会も義務化されています。
個人の散骨は特に規制は行われていません。

静岡県・三島市
平成29年12月12日に制定された「三島市散骨場の経営等の許可等に関する条例案」によると散骨場は市長の許可以外に住民・周辺関係者に対する説明会の開催が義務付けられています。もし市長の命令に違反した場合、事業者名の公表、無許可営業に対しては6 月以下の懲役又は50万円以下の罰金など厳しい処罰があります。個人が行う散骨についての規制は行われていません。

世界の散骨事情と許可

国別に散骨事情をザックリまとめました

粉骨にすれば飛行機内の持ち込みは大体可能です。あとは税関で口頭、英文の粉骨証明証で説明してください。散骨をしたい国の大使館へ散骨が可能なのか確認はしておきましょう。

アメリカ合衆国・カリフォルニア州
海、または霊園などで遺骨は粉骨にすることで海、霊園でできます。

アメリカ合衆国・ネバダ州
霊園内で散骨は可能です。

アメリカ合衆国・ハワイ州
海洋散骨、個人敷地内は可能。海では3マイル沖合で撒くというルールが連邦水質汚染防止法にありまます。また海で散骨をした場合には散骨30日以内にアメリカ合衆国環境保護庁(EPA:Environmental Protection Agency)に報告をします。

イタリア
カソリックの人が非常に多く宗教上、散骨はほとんど行われていませんが、散骨行為については条例定められている可能地域もあります。

フランス
公道以外の場所であれば散骨可能です。

中国
2018年殯葬管理条例の改正により、国が補助金が出すなど散骨を推奨しています。

台湾
台湾も散骨を推奨しており、国民には補助があり無料で散骨できます。

韓国
国土が狭く墓地の不足からソウルといった都市部では今までの土葬から火葬へと移行している。「葬事等に関する法律」の改正により、散骨が推奨されています。
フィリピン
フィリピンは土葬がメインのため散骨をする人はあまりいませんが散骨は可能です。

インドネシア
沢山の島があるインドネシアは、バリ島も含めて散骨されています。

以上、長くなりましたが、散骨の法律がほぼ理解できたと思います。
もし散骨業者に依頼する時は、法律や散骨のルールを心得ている日本海洋散骨協会に属してる業者、またはにガイドラインに沿っているか確認すると良いでしょう。